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ステートメント

泣いたことを覚えていない子どもと、
泣く方法を忘れた大人たちへ。
私が描いているのは、
大きな感情ではありません。
声にならなかった気持ち、
飲み込んだ言葉、
胸の奥で静かに重たくなった涙。
水彩は、記憶にとてもよく似ています。
透明で、重なって、消えたようで、決して消えない。
にじみや跡は、そのまま心のかたちになります。
絵に現れる子どもやくまの姿は、
意図的に描いているわけではありません。
私の中に、まだそこにいる「小さな誰か」が
自然と浮かび上がっているだけです。
私は景色を描いているのではなく、
心が覚えている場所を描いています。
懐かしさと寂しさが同時に存在する空間。
誰かに抱きしめられたかった夜。
泣けなかった日の涙。
私の絵が、誰かの心の奥にある
小さな声に触れることができたなら。
もし、たった一人でも、
「あの日の自分」が救われるような瞬間が生まれたなら。
それだけで、描く理由になります。
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